メッセージ:2019年4月〜6月  

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深セン交響楽団とのコンサートを終えて
(「セン」は「土」へんに「川」)
−飯守泰次郎−

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Schenzen Concert Hall 外観
Shenzhen Concert Hall 外観
 

Shenzhen Concert Hallのホワイエ
Shenzhen Concert Hallのホワイエ

飯守泰次郎です。深セン交響楽団との共演(2019/6/28)を終えて帰国いたしました。
ヨーロッパから帰ってくると東京が実に色々な音と色彩に溢れていると感じるのですが、今回、中国の活気ある喧噪と街並みから戻ってみると、東京がとても静かな街のように感じられます。

コンサートの本番は、Yangさんとのブルッフを楽しみ、プログラムの後半ではブルックナーらしい悠久とした息の長いフレーズ感や、音色のコントラストを表現することができました。楽員の皆さんもこの大曲に取り組み一所懸命演奏してくれて、大変嬉しく思いました。

会場のShenzhen Concert Hallは、透明な光に包まれた外観と、まるで巨大なクモの巣のようなモダンなホワイエをもつホールで、周辺の華美な高層ビル街と競い合うかのようで、まさに深センらしい風景です。コンサート後に撮った写真も含め、いくつかご紹介します。

ホール周辺の高層ビルはライトアップされていて、しかも全体がプロジェクション・マッピングの映像のように絵と色がどんどん変化します。ピカピカした夜景が次々と変わっていく様子は、まさしく最先端の町です。

経済の発展でエネルギーに溢れる深センの街で過ごした約一週間は、私にとっても大変新鮮な経験となりました。この後まもなく8月にも、今度は北京で指揮をするために再び中国に行くので、また大変楽しみです。

コンサートでいただいた素敵な花かごと           
            コンサートでいただいた素敵な花かごと
高層ビルのライトアップ          
            ホール前から見た高層ビルのライトアップ(プロジェクション・マッピング)が次々変化します

 

飯守泰次郎

 

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深セン交響楽団Classic Belt Series 17
「《一帯経典》系列十七」(2019/6/28)に寄せて
(「セン」は「土」へんに「川」)
−飯守泰次郎−

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Shenzhen Concert HallでのGP
Shenzhen Concert HallでのGP

飯守泰次郎です。間もなく本日6/28の晩、深セン交響楽団の「Classic Belt Series」と題するコンサート・シリーズを指揮いたします。ステージリハーサルを終えてホテルに戻ってきました。一休みして、開演は当地の20時です。

今夜のプログラムは、前半がブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番ト短調、後半はブルックナーの交響曲第7番ホ長調です。

昨日のゲネプロは、本番会場であるShenzhen Concert Hall(深セン音楽庁)で行われました。写真はブルッフのリハーサルの様子です。
このホールはご覧の通り、ワインヤード形式でパイプオルガンも備えた重厚で豪華なホールです。
ソリストのYang Tianwaさん(私の左)と、深セン交響楽団のメンバーと
ソリストのYang Tianwaさん(私の左)と、深セン交響楽団のメンバーと
ソリストのYangさんは、ドイツでのコンサートを終えて帰国したばかりで、非常に自由でしなやかにブルッフを演奏されており、本番が楽しみです。

深センは、数十年前まで小さな漁村だったそうですが、改革解放政策で経済特区に指定されて以来劇的に発展して2000万人以上の大都市となり、中国を代表する企業も深センに本社を構えています。深セン交響楽団もまさにこの街にふさわしい、若く、パワフルなオーケストラです。

エネルギーに溢れたここ深センの街で、素晴らしいホールで演奏できることを大変嬉しく思います。

深センの日没           
            深センの日没

 

飯守泰次郎

 

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深セン
にて〜2019年6月

(「セン」は「土」へんに「川」)
−飯守泰次郎−

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私の後ろの高いビルは115階建て!
私の後ろの高いビルは115階建て!

飯守泰次郎です。昨夜のNHKEテレ「クラシック音楽館〜伝説の名演奏〜」をご覧くださった皆様、どうもありがとうございました。

私がバイロイト音楽祭の音楽助手を務めていた頃のことについて取材を受ける機会は多いのですが、これまではたまたまピエール・ブーレーズやダニエル・バレンボイムに関して聞かれることが多く、ホルスト・シュタインについて聞かれたことはあまりありませんでした。
今回の取材を受けて、シュタインのリハーサルや演奏について色々改めて考える貴重な機会ともなりました。

シュタインとはバイロイト音楽祭で出会い、『ニーベルングの指環』のアシスタントをして徹底的に鍛えられただけでなく、マンハイムやハンブルクの歌劇場でもご一緒することが多かったので、最も多くの時間を共有し影響を受けた指揮者、といっても過言ではありません。
彼は厳しい指揮者ではありましたが同時にユーモアに溢れた人だったので、「一緒にたくさん仕事をした」というよりも、「一緒にたくさん遊んだ」ような気もします。

今回の番組がきっかけとなって、シュタインの演奏を実際に聴く機会のなかった若い世代の方々にも、彼の素晴らしい音楽を知っていただくことができるのなら、私も嬉しく思います。

ホテルでの勉強風景
ホテルでの勉強風景
さて、6/28に中国の深セン交響楽団の「Classic Belt Series」と題されたコンサートを指揮するために、今週から深センに来ております。 深センは中国南部・広東省の大都市で、中心部は写真のとおり超高層ビルが林立しており、最先端の町並みに圧倒されています。

今回のコンサートのプログラムは、前半がブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番ト短調で、ソリストはYang Tianwaさんです。後半はブルックナーの交響曲第7番ホ長調です。 また後ほど、リハーサルの様子などもお伝えできればと思います。

 

飯守泰次郎

 

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日本フィルハーモニー交響楽団との演奏会に寄せて
〜第113回さいたま定期(5/24)、第347回横浜定期(5/25)、
杉並公会堂シリーズ2019-2020第1回(5/26)〜

−飯守泰次郎−

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日フィル杉並公会堂シリーズ公演の完売御礼ポスター

飯守泰次郎です。本日から3日連続で、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を指揮します。

日フィルは各地域に根差した地道な活動に特に力を入れているオーケストラで、今回の3公演も、5/24 は「さいたま定期」(さいたま市大宮区のソニックシティ大ホール)、 「横浜定期」(横浜市のみなとみらい大ホール)、「杉並公会堂シリーズ」(東京都杉並区)、という各地で、同じプログラムを演奏いたします。

曲目は、ベートーヴェンの序曲『レオノーレ』第3番に続いて、ピアノ独奏に上原彩子さんをお迎えしてシューマンのピアノ協奏曲、そして後半は「運命」で、まさにドイツ音楽の真髄を満喫していただける作品が並んでおります。

ベートーヴェンが、唯一の歌劇『フィデリオ』のために4曲もの序曲を書いたことは、このホームページでも何度かご説明してまいりました。
苦心の挙句にようやく到達したこの『レオノーレ』第3番は、極めて完成度が高く、歌劇『フィデリオ』の精神と内容を見事に凝縮しています。


素晴らしいシューマンを3日間ご一緒できた上原彩子さんと
素晴らしいシューマンを3日間ご一緒できた上原彩子さんと
シューマンは、ベートーヴェンが確立したドイツの交響曲の伝統を継承しようとして大変苦しんだ作曲家です。残された作品はいずれも彼独特の素晴らしい魅力がありますが、特にこのピアノ協奏曲は、古今のすべてのピアノ協奏曲の中でも特別な名曲です。
日本を代表するピアニストのお一人として大活躍されている上原彩子さんと初共演が叶い、大変楽しみです。

日フィルとはもう長いお付き合いで、ドイツ音楽を中心に定期的にご一緒しています。私の意を汲んでパワフルに演奏してくださるオーケストラで、「運命」もどうぞご期待ください。各地のホールで、皆様のお越しをお待ちしております。


コンサートマスターを務めてくださった千葉清加さんと           
            今回の3公演でコンサートマスターを務めてくださった
千葉清加さんと
 

飯守泰次郎

 

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仙台フィルハーモニー管弦楽団
第328回定期演奏会(2019/5/17,18)によせて

−飯守泰次郎−

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ベートーヴェン「運命」
ベートーヴェン「運命」(写真提供:仙台フィルハーモニー管弦楽団)
 


飯守泰次郎です。5月17日と18日の仙台フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会に向けて、仙台でリハーサルを重ねております。 今回はコンサートの前半がベートーヴェンの「田園」、後半が「運命」というプログラムです。

この対照的な2つの交響曲が、同じ時期に並行して作曲されたことは、不思議なようでもありますが、ベートーヴェンはむしろ、2つの全く異なる作品に取り組むことで創造のバランスを保っていたのかもしれません。似たようなことは他の作曲家にもあり、ブラームスが「悲劇的序曲」と「大学祝典序曲」を同時に作曲していたこともそのひとつの例です。

交響曲第6番「田園」は、ベートーヴェンの交響曲の中でもひときわ豊かな内容を持つ偉大な作品であり、私もまだ思春期のころから特別な愛着を感じてまいりました。この作品は、1809年に「運命」と同じ演奏会で初演されたことが知られています。

交響曲第5番「運命」は、ハ短調からハ長調へ、苦悩を経て勝利へ、という、まさにベートーヴェンを代表する名曲といえます。彼は天才でありながら、実生活においては、乱暴な父親、経済的困窮、恋愛における挫折、作曲家として致命的な聴覚喪失、などの逆境と闘い続け、壮絶な人生を送りました。逆境を闘い抜いた彼独特の強い精神力と、ゲルマン的な見事な構成力を象徴する交響曲なのです。

仙台フィルの常任指揮者就任以来、ベートーヴェンをひとつの柱としており、昨年は交響曲第2番、第3番というプログラムを演奏しました。今回もまた交響曲2曲という非常に凝縮したプログラムですが、仙台フィルは若々しいエネルギーと新鮮な集中力をもって取り組んでくれています。

2日ある定期演奏会のうち、5/18土曜日のチケットはすでに完売とのことで、多くのお客様がいらしてくださることを大変嬉しく思います。皆様のお越しを、新緑に囲まれた日立システムズホール仙台でお待ちしております。

***

(以下、5月20日追記)
おかげさまで両日とも、お客様の大変熱い拍手をいただいて定期演奏会を終えることができました。どうもありがとうございました。

このたびの演奏につきまして、少し補足させていただきます。上掲の舞台写真の通り、今回もコントラバスを正面横一列に配したセッティングといたしました。この配置は、特に古典派の音楽を、コンパクトで響きの良い日立システムズホールで演奏する場合に最適であり、「仙台フィル・スタイル」として定着させたいと思っております。

今回は、「運命」「田園」ともにベーレンライター版の楽譜を使用し、テンポもいわば「快速」で演奏いたしました。また「運命」の第3楽章は中間部のあとダ・カーポして(冒頭に戻って繰り返して)演奏しましたが、これは「交響曲第4番および第6番の第3楽章にダ・カーポがあるように、第5番もダ・カーポすべき」というベーレンライター版の解釈に基づき判断いたしました。

ベートーヴェンに限らず、特に古典派の演奏スタイルには現在さまざまな潮流があります。いずれにせよ、作曲家の音楽的発想を尊重し、ホールやオーケストラの個性も考慮して最良の判断を追求することは、実際に鳴り響く音を構築する演奏家の務めであると考えております。

 

飯守泰次郎

 

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仙台フィルとのCDによせて
〜「新たな『新世界』の発見」〜

−飯守泰次郎−

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仙台フィルとの「新世界」CDジャケット

(4/3の当CD発売に際して寄せた文章を、このホームページをご覧くださる皆様もすぐお読みいただけるように、以下に掲載いたします)

***

このCDに収録された「新世界」の演奏に際し、私は改めて自筆譜に立ち戻って細部まで慎重に検討しました。その結果、今まで一般的に演奏され、聴かれてきた演奏譜に、多くのミスや見落とし等の問題があることがわかりました。

「新世界」の初版がヨーロッパで出版された当時、ドヴォルジャーク本人はアメリカ在住だったことに加え、作曲家自身によると思われる誤りも少なくなかったため、初版の段階から他者によって多数の「修正」が施されました。その後も多くの校訂者が出現し、さまざまな箇所の音程やリズムについて、極端にいえばありがた迷惑とも言える「修正」が施されたまま演奏されてきたのです。

今回、自筆譜に照らして妥当と判断した箇所を訂正して演奏した結果、私自身もいわば“新たな「新世界」”を発見でき、非常に新鮮な気持ちになりました。皆様も是非、従来との違いを聴き比べていただき、私と仙台フィルの新たな発見を共にお楽しみいただければ嬉しく思います。

 

飯守泰次郎

 
 
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