メッセージ:2017年4月〜6月  

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新国立劇場『ジークフリート』を終えて(2017年6月〜音楽スタッフ編)
−飯守泰次郎−

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「『ジークフリート』音楽スタッフ打ち上げにて
『ジークフリート』音楽スタッフ打ち上げにて
 


飯守泰次郎です。 新国立劇場『ジークフリート』全6公演を支えてくれた、音楽スタッフの皆さんについても、ぜひお伝えしたいと思います。

『指環』に取り組むたびにいつも思うことは、音楽的にも劇的にもここまで複雑な作品はないのではないか、ということです。いかにワーグナーが自分の世界観をひとつにまとめていくのに苦労したか、スコアを読めば読むほどわかるのです。 このような“総合芸術”を上演することは、容易ではありません。キャストはもちろんオーケストラ、コーラス、演出スタッフ、裏方さん等々、本当に様々な力が結束することが必要です。

音楽に関しては、お客様からは見えにくいところではありますが、音楽スタッフの力なくしては成り立ちません。 新国立劇場の音楽スタッフの皆さんは、世界に数ある歌劇場のなかでも特に素晴らしい能力と経験を持っており、私も全面的に信頼しています。

今回の『ジークフリート』は特に音楽面の複雑さが際立つ難しい作品ですが、音楽ヘッドコーチの石坂宏さん、音楽チーフ、プロンプターの城谷正博さん、副指揮の根本卓也さん、コレペティトゥールの小埜寺美樹さん、木下志寿子さんの見事なチームワークの力に支えられ、私も非常に集中して仕事をすることができました。

次回の『神々の黄昏』はさらに大作になりますが、このチームの結束力できっと乗り切れると信じています!

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場『ジークフリート』を終えて(2017年6月)
−飯守泰次郎−

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『ジークフリート』終演後の記念写真
新国立劇場『ジークフリート』楽日終演後(2017年6月17日)〜私の右からクリスタ・マイヤー氏(エルダ)、リカルダ・メルベート氏(ブリュンヒルデ)、アンドレアス・コンラッド氏(ミーメ)、ステファン・グールド氏(ジークフリート)、グリア・グリムスレイ氏(さすらい人)、トーマス・ガゼリ氏(アルベリヒ)、クリスティアン・ヒュープナー氏(ファーフナー)と共に
 


飯守泰次郎です。 皆様の応援に支えられ、新国立劇場『ジークフリート』全6公演を終えることができました。ホームページをご覧くださっている皆様、改めて御礼を申し上げます。

『ジークフリート』は、『指環』の中でも特に技術的にも、またリズム的にも複雑で、歌手にも管弦楽にもスピード感ある表現と並外れたエネルギーが求められる作品です。

ステファン・グールド氏がローゲ(2015年『ラインの黄金』)、ジークムント(2016年『ワルキューレ』)に続いて、今回はタイトルロールであるジークフリートの成長する姿を見事に歌ってくれました。上記の写真でご覧いただける通り、大変すぐれたワーグナー歌手の皆さんが勢揃いし、毎回の公演でお客様からいただく拍手と声援も熱気に溢れていました。
森の小鳥は、今回は4人の歌手が樹上にとまってかわるがわる歌う演出で、新国立劇場バレエ団の花形ダンサーとともに軽やかな色彩を添えてくれました。

東京交響楽団は、新国立劇場ではこれまでワーグナーの前期作品を担当しており、後期の『指環』のピットには初めて入ったオーケストラです。 『ジークフリート』は、上演時間も6時間と特に長く、ワーグナーの中でもオーケストラの機能性への要求が最も高い作品のひとつでもあり、大きな挑戦だったと思いますが、巨大な楽劇の表現をオーケストラが主体的に担うことへの新鮮な好奇心と、オーケストラ内部の精密なアンサンブルの力をフルに発揮して、献身的な演奏をしてくれたことに感謝しています。

『ジークフリート』を単体としてみるとハッピーエンドですが、今回の公演プログラム巻頭のご挨拶でも触れたとおり、幕切れの二重唱にはこの後の『神々の黄昏』へとつながる陰りが忍び寄っています。
『神々の黄昏』は、新国立劇場開場20周年を記念する2017/18シーズンの開幕公演として、10月に上演いたします。キャストは引き続きジークフリートにステファン・グールド氏、ブリュンヒルデには『ローエングリン』(2016年)のオルトルートで大変評価が高く最近はグールド氏との共演も多いペトラ・ラング氏、ハーゲンにアルベルト・ペーゼンドルファー氏(2016年『ワルキューレ』のフンディング)、そしてヴァルトラウテにはヴァルトラウト・マイヤー氏がついに新国立劇場に初登場します。さらに、新国立劇場の誇る合唱団がいよいよ登場するほか、ピットには初めて読売日本交響楽団が入ります。

間もなく約3カ月後、この巨大な物語をしめくくるにふさわしい上演をお届けできるよう、引き続き力を尽くしてまいります。

 

飯守泰次郎

 

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新国立劇場『ジークフリート』(2017/6/1・4・7・10・14・17)によせて
−飯守泰次郎−

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グリア・グリムスレイ氏(”さすらい人”)、ステファン・グールド氏(ジークフリート)、リカルダ・メルベート氏(ブリュンヒルデ)と
グリア・グリムスレイ氏(”さすらい人”)、ステファン・グールド氏(ジークフリート)、リカルダ・メルベート氏(ブリュンヒルデ)と

飯守泰次郎です。このホームページをご覧になってくださる皆様に、しばらくごぶさたをしてしまいましたが、ゴールデンウィーク明けからずっと、新国立劇場2016/17シーズンを締め くくる『ジークフリート』に集中しております。

上演時間が5時間半を超え、ワーグナーの中でも特に長丁場で、演奏する側にとってもお客様にとってもタフなこの楽劇を 、これまで中2日で4回上演してまいりました。中3日をはさみ、残すところ6/14(水)と6/17(土)の2公演のみとなりました。
世界最高のワーグナー歌手陣と並んで、今回ピットに入っている東京交響楽団もワーグナー・オーケストラとしての新たな魅力を存分に聴かせてくれています。
新国立劇場2016/17シーズン・エンディング・パーティーでのご挨拶
新国立劇場2016/17シーズン・エンディング・パーティーでのご挨拶

4回目の公演翌日の6/11には、新国立劇場で「シーズン・エンディング・パーティー」が開かれました。このようなハード・スケジュールの中、タイトルロールのステファン・グールド氏、“さすらい人”役のグリア・グリムスレイ氏、ブリュンヒルデ役のリカルダ・メルベート氏、という“神々族”ゆかりの3歌手も参加して華やかな席となりました。

やはり、これだけ長い作品をどう乗り切るか、ということにお客様も関心をお持ちのようで、歌手も私もそれぞれの乗り切り方をお話ししました。
私は、もともと代謝が良いのか汗かきで、普段からかなり多くの水分を摂りますが、特に『ジークフリート』となると毎回何リットルもの水を飲みます。本番が終わると燕尾服がズッシリと重たくなります。
それでも、このような世界最高のワーグナー歌手とともに素晴らしい舞台を上演でき、聴衆の皆様に作品の内容をお伝えできることは幸せであり、そのためならどんなに汗をかいてもいい、と私は思います。

新国立劇場の『ニーベルングの指環』は、2015年の『ラインの黄金』で全てが始まり、1年後の2016年10月に『ワルキューレ』で内面的な愛の物語が、そして8カ月後の現在上演中の『ジークフリート』では英雄の成長が行動的に描かれています。約3カ月後の今秋10月には『神々の黄昏』が迫っており、登場人物の今までのすべての行動が最後にどのような結果を生むのかが示されます。

『ジークフリート』第3幕は『指環』四部作における幸福と勝利の絶頂であり、ブリュンヒルデの目覚めの場面の音楽は、形を変えて『神々の黄昏』でも2回再現されます。現在上演中の『ジークフリート』と、10月に始まる2017/18シーズン開幕公演『神々の黄昏』を続けて聴いていただければ、この巨大な作品の内容をいっそう深く感じ取っていただけるのではないかと思います。

これまでの4公演にお越しくださったお客様から贈られた熱い拍手とご感想を、残る2公演の支えとして力を尽くしたいと思います。
新国立劇場『ジークフリート』特設ページに寄せた私の文章をこちら(ページの下方)からお読みいただけます。皆様のお越しを、新国立劇場のピットで心よりお待ちしております。

 

飯守泰次郎

 

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関西フィルハーモニー管弦楽団第282回定期演奏会(2017/4/29)
ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」(荘厳ミサ)によせて
−飯守泰次郎−

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飯守泰次郎です。4/29は、関西フィルの定期演奏会で、ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」(荘厳ミサ)を指揮いたします。

「ミサ・ソレムニス」の作品番号は123、交響曲第九番は作品125で、同じ頃に作曲されました。この後、彼はもうオーケストラの作品は書いておらず、第九と「ミサ・ソレムニス」は、ベートーヴェン後期に並び立つ大作です。
第九は、ベートーヴェンの思想の集大成であり、全人類・全世界へ力強く訴えかけるメッセージです。一方、「ミサ・ソレムニス」は、ベートーヴェンの信仰心の集大成であり、彼の一生の心のすべてが入っている、非常に内面的な深さをもつ音楽です。交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノ・ソナタを究める一方で彼は、宗教音楽を書きたいという願いを持ち続け、教会の典礼音楽の研究もしており、その長い願いをついに実現させたのが「ミサ・ソレムニス」です。

「ミサ・ソレムニス」は、宗教音楽ではありますが、ベートーヴェンという人の性格が大変よく表れていて、ミサ曲としては一風変わっています。
ベートーヴェンは人間的にとても正直なところがあり、喜び、悲しみ、怒りといった感情を、直接的に音楽としてスコアに書きました。もちろん、どんな作曲家にもそのような要素はありますが、ベートーヴェンほど生(なま)の人間性を音楽に表現した人は類を見ない、と思います。「ミサ・ソレムニス」は、まさにベートーヴェンならではの特別なミサ曲です。

この偉大な作品のスコアを読んでいると、生身のベートーヴェンから語り掛けられているような感じがしてきます。関西フィルとは、15年ほど前にこの作品を演奏したことがあり、長い時間を置いてふたたび、関西フィルハーモニー合唱団と一緒に素晴らしいソリストをお迎えして演奏できることを、幸せに思います。
指揮者の岩村力さんがいらっしゃり、バランスの確認等々で大変助けてくださいました
指揮者の岩村力さんがいらっしゃり、バランスの確認等々で大変助けてくださいました

連休初日ではありますが、ザ・シンフォニーホールへ皆様のお越しをお待ちしております.。

 
飯守泰次郎

 
 
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