メッセージ:2015年10月〜12月  

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新国立劇場『ラインの黄金』(2015/10/1・4・7・10・14・17)によせて・その2
−飯守泰次郎−

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新国立劇場前にて
新国立劇場前にて
飯守泰次郎です。新国立劇場の2015/2016シーズン開幕公演であるワーグナー『ニーベルングの指環』の序夜『ラインの黄金』が、おかげさまで全6公演のうち4公演を無事終え、残り2公演となりました。

『ニーベルングの指環』という作品は、神話・伝説から題材を採っています。

神話・伝説といえば昔々の物語かと思えば、その内容は、『ラインの黄金』だけを見ても、自然破壊、愛のもつれ、夫婦げんか、憎しみ、欲望…まさに、今朝の新聞をにぎわせている様々な出来事そのものです。

その意味では、人間は昔から全く変わっていないのです。 このように、『指環』が扱っているのは、まったく私たちにとって耳が痛い、まさにアクチュアルなテーマなのです。

人間がこの世に存在するかぎり避けることのできない数々の問題を、150年前に見通して警告したワーグナーの洞察力には、驚くばかりです。

ステファン・グールド氏と楽屋で
ステファン・グールド氏と楽屋で
ローゲ役のステファン・グールド氏は、大変な日本好きで、特に大相撲には私たちよりはるかに詳しいほどです。
秋場所の戦績もよくご存じで、白鵬関のファンだそうです。 関取並みの立派な体格なので、衣裳を着る前の浴衣姿もよくお似合いです。

10月10日の公演終了後には、新国立劇場の個人賛助会員の方々をお招きしたパーティーがありました。 出演歌手も交えて、和やかな交流のひとときを持つことができました。

ヴォータンとローゲの衣裳や、アルベリヒの蛙と指環、ヴォータンの槍の実物が展示され、お客様に間近でご覧いただきました。

クリスタ・マイヤー氏およびご友人と クリスタ・マイヤー氏およびご友人と

このパーティーの席上、エルダ役のクリスタ・マイヤー氏が、1970年代にバイロイトで助手をしていた頃の私を知っているというご友人に、引き合わせてくださいました。

『ラインの黄金』は休憩なしの1幕、2時間半かかるので、お聴きいただく皆様の中には、そもそも聴き通せるかご心配される方もおありでしょう。
『指環』はこのあと、『ワルキューレ』が3時間超、『ジークフリート』は4時間、『神々の黄昏』になると5時間近く、とどんどん長くなりますが、『ラインの黄金』以外はそれぞれ2回の休憩があります。 この『ラインの黄金』を聴き通せば、これ以上長い幕はないので、あとはご安心いただけると思います。

アルベリヒの蛙と指環
アルベリヒの蛙と指環
(新国立劇場個人賛助会員パーティーにおける展示)
全体で15時間くらいかかる『指環』を舞台上演できる機会は、世界的にみても決して多くはありません。
四部作の序夜『ラインの黄金』は、あと10/14と10/17の2公演がございますので、ここから始まる新国立劇場の『指環』に、ぜひお越しください。 皆様のお越しをお待ちしております。
 

飯守泰次郎


 

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新国立劇場『ラインの黄金』(2015/10/1・4・7・10・14・17)によせて
−飯守泰次郎−

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リハーサルの様子
カラン・アームストロング氏(ゲッツ・フリードリヒ夫人)と
ご子息のヨハネスさんと
飯守泰次郎です。いよいよ明日、新国立劇場の新しい2015/2016シーズンが、ワーグナー『ニーベルングの指環』の序夜『ラインの黄金』(全6公演)で幕を開けます。

先日のゲネプロには、名ソプラノのカラン・アームストロングさん(ゲッツ・フリードリヒ夫人)がご子息のヨハネスさんと一緒に駆けつけてくださいました。

彼女とはヨーロッパで何度もご一緒してきたので、私が指揮する『ラインの黄金』の響きを聴けること、しかも夫君のフリードリヒ氏の演出であるということを、大変喜んでくださいました。本当に久しぶりに再会できて、私も大変嬉しく思いました。

立ち稽古に立ち会う
立ち稽古に立ち会う(写真:M.Terashi/Tokyo MDE)

これまでのリハーサルの様子や各種のインタビューなどは、トップページでもご紹介してまいりましたとおり、新国立劇場のホームページで案内されておりますので、ぜひご覧ください。
本日9/30現在ではまだS席、および一部公演はA席のチケットがございます(学生の方は当日半額割引もあります)。

以下の文章は、新国立劇場ホームページからご覧いただけるものですが、私のホームページをいつもご覧くださる方にもすぐにお読みいただけるように、掲載いたします。

それでは、新国立劇場で皆様のお越しを心からお待ちしております。


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新国立劇場2015/2016シーズン オープニング公演
「ニーベルングの指環」序夜「ラインの黄金」 〜永遠に終わることのない問題提起〜

新国立劇場オペラ芸術監督 飯守泰次郎
新国立劇場2015年8月報道発表資料より(提供:新国立劇場)

2017年に開場20周年を迎える新国立劇場は、この2015年秋から3年がかりで、オペラ史上最大のスケールを持つ超大作『ニーベルングの指環』を上演します。

新国立劇場オペラ芸術監督就任2シーズン目となり、私は、これまで全世界で蓄積されてきたワーグナー演奏と演出の歴史のすべてを結集して、『指環』の本質に最も迫る上演を実現することを決意いたしました。
そしてそれが実現できるのは、まさにここ新国立劇場である、と確信いたしております。いま世界で最も踏み込んだ『指環』体験をしていただくために、皆様に、ぜひ新国立劇場にいらしてくださるよう呼びかけたいと思います。

『ニーベルングの指環』には、ひとつの世界が生まれて終わるまでのすべてが描かれています。

いま私たちの生きる現実の世界は、人類と地球の存続に関わる数々の問題に直面し、この状態からの救済を求めて、あらゆる分野で必死の努力が続けられています。
ワーグナーがオペラの創作を通じて生涯追求し続けたのが、まさにこの“救済”というテーマです。
『指環』は、権力と愛、あるいは人間と自然の調和についての、ワーグナーからの巨大な問題提起です。
“最終的にこの世が救済されるためには何がなされなければならないのか”という問いに対して、答えはあるのでしょうか。

『指環』を上演するということは、まさにこの答えのない問いに、オペラの舞台を通して向き合うことにほかなりません。

ワーグナーの作品だけを集中して演奏してきた、比類のない歴史を持つバイロイト音楽祭の現場に、私は長年にわたって身を置いてまいりました。『指環』という作品にも生涯を通じて向かい合い、数多くの演出を体験しました。

故ゲッツ・フリードリヒ氏とは、私がまだ若い頃から一緒に仕事をする機会に恵まれました。
彼は、かつてないほど音楽と演出の両方を徹底的に深く掘り下げて、新しい演出のスタイルを確立し、晩年には音楽と演出が極端に矛盾することのない境地に達しました。
彼の生涯最後の『指環』の偉大なプロダクションを、いま東京で実現することに大きな意義がある、と私は考えています。

ステファン・グールド氏(ローゲ)を迎える〜9月初のキックオフで ステファン・グールド氏(ローゲ)を迎える〜9月初のキックオフで
(写真:M.Terashi/Tokyo MDE)

さらに、このたびの『指環』においては、主役級テノール4役―ローゲ、ジークムント、『ジークフリート』と『神々の黄昏』のジークフリートのすべてを、世界的なヘルデン・テノールであるステファン・グールドが歌うことに、おおいにご注目ください。
極めて優れたテノール歌手のみに可能なこの偉業に、ぜひ立ち会っていただきたいと思います。

 

飯守泰次郎

 
 
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